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科学捜査、DNA鑑定について

DNAは最近の科学捜査,特に殺人、暴行、性的犯罪のような重要犯罪捜査には欠かせないものとなってきています。実際DNAにおけるテクノロジーの飛躍的進歩はこうした重犯罪以外の捜査にも浸透してきており例えば車のハンドルに付着したドライバーの手汗、指紋などを拭い取った布からも採集されることにより車窃盗の捜査にも大きな助けとなってきているのが現状です。

ここでは基本的なDNA科学に触れさらに科学犯罪研究所(Crime Lab)でどのように鑑定されるのかお話ししましょう。私は元ロサンゼルス警察刑事(Los Angeles County Sheriff's Department)で現在はプライベートで主に公判のための刑事、民事犯罪を扱っていますがDNAの専門家でもなければ、専門的なDNA講義をするようなつもりもありません。あくまでDNAに興味を持っている一般の皆さんが知っておいてためになるDNAの基礎的知識と事実をお話ししたいと思います。


DNAとは何でしょう?

まずそのことからお話ししなければならないでしょう。DNA とは "DEOXYRIBONUCLEIC ACID" と舌を噛みそうな長い医学専門用語の略です。DNAはすべての生き物に実存する科学的実体で生命の"遺伝的ブループリント"(Genetic Blueprint)として知られていることから人間が生命を維持させることを可能にさせる手引きとでもいいましょうか。DNAは遺伝子です。人間は半分のDNAを母親から残りの半分を父親から受け継いでいます。DNAはそれ自体で他のDNAをコピーする能力をもっているので新しい細胞は同じDNA遺伝子を引き継ぐのです。

遺伝子的に非常に似通った双子を除き、この世に全く同じDNAをもつ人間は存在しません。DNAは人間どこの体の部分も同様ですので身体の違う部分から採集したDNAを鑑定すると結果はすべて同じです。ということはあなたの血液から採集したDNAと唾や汗などから採集されたDNAは同じということです。またあなたのDNAタイプは幼少のときも青年、老年を迎えても決して変わらないということです。だから23年前ロサンゼルスで殺人を犯した犯人が犯行現場で自分の指をナイフで切って残した自身の血と最近別の容疑でニューヨーク警察に逮捕された男から摂取された血液とがマッチしたら同一人物ということです。さらにDNAは炎暑や湿気など過酷な気象条件にも強く又保存状態が良好であれば10年前に採取されたサンプルも現在でも鑑定可能ということです。

DNAは人間体内のほぼすべての細胞内に見ることが出来ます。あるものは白血球細胞であり(赤血球には実際DNAは存在しない)精液細胞、膣内、皮膚細胞にも見られます。DNA鑑定でもっともポピュラーな方法はこの細胞の核に包含されたDNAを鑑定することでこの核,(Nucleus)は細胞の根幹である脳のような役割を果たしています。DNAは染色体(Chromosomes)として知られる構造内に含まれており糸巻きに巻かれた糸と同じような状態で足場の周りを取り巻くDNAの集合体とでもいえましょう。

人間にはそれぞれの細胞の核内に23の対になった染色体があります。なぜ対(ペア)かというと一つの染色体が父親から他方が母親からということになります。X染色体とY染色体が人間の男女の性別を決定するということで多分もっとも良く知られた染色だと思います。女性はXとXのように二つのXX染色体を有し、男性はXとYのXY染色体を持っています。このXXあるいはXYの染色体のペアのそれぞれが両親どちらかの遺伝です。ということは母親はXXなのでXの染色体しか子供に遺せませんが父親はXYなのでXあるいはYの染色体を子供に遺すことが出来るのです。一般的に言って父親がXあるいはY染色体を遺す割合は50%だと言われています。

DNAは細胞核で見出せることはすでに述べましたが、DNAはミトコンドリアと呼ばれる細胞核外でも見出すことが出来ます。このミトコンドリアを使ったDNA (mtDNA)分析方法は限られておりコストもかなりかかりますが例の2002年に発生したニューヨークワールドトレードセンターのテロによる大惨事では犠牲者の遺体確認も出来ないような極限の状態でDNA鑑定も不可能なときにミトコンドリアDNA鑑定方法により遺体の判別が可能になったということもあります。

また殺人事件の捜査の際被害者の頭の毛をひっぱりむしりとられた毛髪鑑定は毛根にティシューが付着しているので普通のDNA鑑定にも耐えられますが自然に抜け落ちた毛髪は毛根ティシューが無いためmtDNA鑑定法をとらざるを得ません。

法科学研究所でのDNA分析

では実際どのような方法でDNAが分析、鑑定されるのか例を挙げてお話ししましょう。一般的な例として住宅空き巣(Residential Burglary) の場合、室内に侵入した犯人が窓を破る際に手に怪我し血を流した場合、まず犯行現場から採取した血液、逮捕後容疑者から採取した血液、その家に住んでいる家人すべてから採取した血液が研究所に持ち込まれ鑑定の対象となりますが研究所ではすべて分け隔てなく同じような方法でテストを執り行います。ただ犯行現場の窓枠に付着した採取血液と他の関係者から採取した血液は汚染や混合などの危険をさけるために試験は別々の場所で行うのが原則です。

分析はまずDNAを細胞からあるいは細胞以外のコンポーネントから隔離することから初めます。手を切って出た血痕をテストチューブに入れ、化学薬品を混入、チューブを加熱します。"DNA隔離"(DNA Extraction) というこの方法で細胞が染色体と隔離されるのです。

次にサンプルから隔離されたDNAはどの位の量があれば試験が可能かということです。ここでいう量というのは非常に重要な要素を占めており多すぎても少なすぎても確かな結果は得られません。またサンプルから摂取されたDNAが必ずしもテスト可能であるとは限りません。というのは摂取されたDNAが長時間湿気や熱にさらされたりするとそこからバクテリアが発生しDNAの質が劣化してしまうからです。(細かく分断されてしまう)。また銃撃事件の捜査で科学捜査員が被害者の着衣していた黒いジーンズの弾痕箇所をカットし血痕摂取する際よっぽど注意しないとジーンズの黒い染料がDNAと混合してしまい正しい結果が得られない場合もあります。

次にDNAテストのプロセスをお話しましょう。テストに耐えられるだけの充分なサンプルが人間の血液から摂取されますと通常PCRプロセス (Polymerase Chain Reaction - DNAなどの合成に必要な酵素、ポリメラーゼ)で処理されますがこの方法を使えば入手したいほとんどの分析結果が得られます。

DNAタイプの結果は母親と父親から引き継いだ染色体の反復数によって計ることが出来ます。例えて言うなら一つの染色体から12の反復数がまた他方の染色体から16の反復数を見るとその結果は‘12,16’とレポートされるわけです。反復数が増えればDNA数も増えるということです。ちょうどより沢山の貨物車を牽引している汽車はより長いということです。

ではここでDNA分析方法を要約してみましょう。

  • 細胞を分解しDNAを他の異物から浄化する。
  • 摂取されたテスト可能な人間のDNAの量を決定する。
  • PCRテスト方式によりDNAに存在する14のエリアに注目し隔離したあと分析、鑑定のためにそれらを表記し沢山のコピーを作っておく。
  • この14のエリアのうち、一つは男女性別を決定するものであり、他はSTR (Short Tandem Repeats - ショート縦列反復)である。DNAのSTRエリアはDNAを構成する化学要素を表記するコード、A's, G's, T's, C'sなどのパターンを分析する。

こうして長いプロセスが完了し結果がでますと今度は実際に犯罪現場から採取された血液や体液サンプルと比較分析する作業に移ります。

例えば住宅空き巣(Residential Burglary)でDNAの鑑定結果、現場に残された血痕から男性のものと判断されるとまず家人の女性は残された血痕と無関係であることから捜査の対象から外されます。ここで捜査の焦点は家人と犯人を含めた男性となるわけです。ここで該当男性すべてから摂取したDNAをもとに前述の13STRテストの結果から犯人を他のテストした男性から認定することが出来ます。この不成功率は100兆分の1でこの地球上の人類は"わずか" 60億ですからまず完璧な結果が得られることになるでしょう。

DNA鑑定の驚くべき効果

最後にアメリカでDNA鑑定の結果、驚くべき事態が起きているということをお話しましょう。米国内でDNA鑑定の結果、冤罪が晴らされたケースが少なくとも200件に達したということです。この中には死刑囚14人も含まれており、多くは目撃証言が有罪の根拠とされてきたのです。無罪を訴える受刑者の救援活動をしている非営利団体「イノセンス プロジェクト」(本部、ニューヨーク) によるとシカゴで1981年に起きた誘拐、婦女暴行、強盗事件で有罪判決を24年以上も服役していた男性(48)が、このほどDNA鑑定で無罪が証明されました。IPが活動を始めてた89年以降、有罪判決がDNA鑑定で覆ったのはこれで200人目だそうです。

男性は一貫して無実を主張したが、2人の目撃証言があり有罪判決を受け、その後IPの支援で実施された、女性の服に付着した精液のDNA鑑定が無実の決め手となりました。IPによると無罪が証明された200人が刑務所で過ごした時間は1人平均12年、無罪を勝ち取った人の62%は黒人で88%が性的暴行、28%が殺人で有罪判決を受けていました。77%は誤った目撃証言が有罪判決の根拠だったそうです。

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